【vol.59】新高轮王子大饭店

2016年7月号



櫻井翔のケンチクを学ぶ旅。
嵐の櫻井翔さんが、自ら日本全国の気になる建築まで足を運び、その魅力や驚き、感動を誌面でリポートします。
樱井翔的建筑学习之旅。
岚的樱井翔特意亲自前往日本全国感兴趣的建筑，通过杂志向大家传递建筑的魅力和它令人惊异与感动之处。


（背景）

訪れた場所　グランドプリンスホテル新高輪（旧・新高輪プリンスホテル）
1982年竣工。設計：村野藤吾。日本庭園内の＜茶寮　恵庵＞は85年竣工。併設の＜国際館　パミール＞は90年竣工。＜恵庵＞と＜パミール＞は村野の没後に完成。約20,000㎡の日本庭園を中心に、村野が手がけた当ホテルのほか＜グランドプリンスホテル高輪＞＜ザ・プリンス　さくらタワー東京＞がある。●東京都港区高輪3ー13ー1 ☎03・3447・1111。
造访地点 新高轮王子大饭店（旧称新高轮王子酒店）
1982年竣工。设计者：村野藤吾。日本庭园内的“惠庵茶室”于1985年完工。同时设置的“帕米尔国际馆”于1990年竣工。惠庵与帕米尔于村野逝世之后完成。以约20,000㎡的日本庭园为中心，村野亲自设计的作品除了这座酒店之外，还有高轮王子大饭店和东京樱花塔王子酒店。●东京都港区高轮3-13-1 ☎03-3447-1111。

設計した人　村野藤吾
1891年佐賀県唐津生まれ。建築家。早稲田大学理工学部建築学科卒業。渡辺節建築事務所に入所。1929年独立。大阪を拠点に全国に300以上の作品を残す。代表作に＜日生劇場＞＜世界平和記念聖堂＞＜ザ・プリンス　箱根芦ノ湖（旧・箱根プリンスホテル）＞＜なだ万本店　山茶花荘＞など。文化勲章、日本建築学会賞など受賞多数。1984年没。
设计者 村野藤吾
1891年生于佐贺县唐津。毕业于早稻田大学理工学院建筑系。曾效力于渡边节建筑事务所。1929年创办自己的事务所。以大阪为主，在日本全国留下300余件作品。代表作有日生剧场、世界和平纪念大教堂、箱根芦之湖王子酒店（旧称箱根王子酒店）和Nadaman料亭总店山茶花庄等等。荣获日本文化勋章、日本建筑学会奖等多个奖项。1984年逝世。


（导语）
vol.59　晩年の村野藤吾が残した艶やかなシティーホテル。
バブル前夜の1982年に開業した＜新高輪プリンスホテル＞は、建築家・村野藤吾が晩年の91歳で手がけた代表作です。その後、＜グランドプリンスホテル新高輪＞に改名。
櫻井さんも仕事で訪れるというこのホテルを見学しました。
第59期 村野藤吾晚年留下的华丽都市大饭店。
新高轮王子酒店于泡沫经济前夜的1982年开业，是建筑师村野藤吾晚年91岁时亲自设计的代表作。此后更名为新高轮王子大饭店。
曾因工作而拜访过此处的樱井来到这座酒店参观学习。


（主体）

螺旋状のスロープに敷かれた華やかな赤の絨毯。それを引き立てるよう円柱も壁も純白で統一されている。ひときわ目を引くのは天井のオブジェだ。鉄骨がむき出しになった引け目から不思議な曲面を持つ巨大な舌のような反響板がぬるりと顔を出す。
螺旋状斜坡上铺设着华贵的红色地毯。为了突显这一点，圆柱与墙壁统一采用纯白色调。天花板的设计格外引人注目。从毫无遮掩钢筋空隙中，音响反射板如同不可思议地呈现曲面的巨大舌头一般滑溜溜地伸出来。

ここは品川駅から徒歩5分の場所にある＜グランドプリンスホテル新高輪＞内のエントランスホール「うずしお」だ。「人でいっぱいのときしか来たことがなかったので、記憶していたより巨大なホールに感じます」と櫻井さん。年に一度『FNS歌謡祭』の収録で訪れることが恒例となっているこのホテルを今日は建築を楽しみながら歩いてみることにした。
这里是漩涡，它是距离品川站步行5分钟路程的新高轮王子大饭店内的入口大厅。樱井说：“因为只在人山人海的时候来过，所以现在觉得大厅比记忆中大了不少。”樱井因FNS歌谣祭录制而一年一度地惯例造访的这座酒店，今天，就来漫步其中，享受建筑的乐趣吧。

現在の＜グランドプリンスホテル新高輪＞を設計したのは前々回訪れた＜なだ万本店　山茶花荘＞も手がけた建築家の村野藤吾。当時は＜新高輪プリンスホテル＞という名で＜なだ万本店　山茶花荘＞の8年後、バブル前夜の1982年に完成した。村野は当時91歳。しかし、その年齢を微塵も感じさせないダイナミックな空間だ。櫻井さんの立つ「うずしお」は、『FNS歌謡祭』の舞台でもある大宴会場「飛天」へと続く専用アプローチで、宿泊客の動線とは分離され、宴会場へ導くためだけに設計されている。「収録の際はいつもこのホールから現場入りして、場所へ向かうという流れなんです。こうして改めて訪れると、天井のオブジェの迫力にも気づきますね。すごい存在感です」。これは雲母と呼ばれる建材を樹脂で固めたもので、音響効果もあるとされている。天井の引け目から鉄骨の構造体が覗く仕様は大宴会場「飛天」にも見られ、4つの巨大シャンデリアを支えるブレース（支柱）があえて目立つようエメラルドに着色されている。アコヤ貝を張ったきらびやかな天井とのコントラストが面白い。
现在这座新高轮王子大饭店的，是亲自设计了前两期造访的Nadaman料亭总店山茶花庄的设计师，村野藤吾。大饭店当时称为新高轮王子饭店，在Nadaman料亭总店山茶花庄竣工8年之后，于泡沫经济前夜1982年完成。村野当时91岁。但是，从建筑中完全感受不到那样的年龄，而是充满动感。樱井所处的“漩涡”作为通往FNS歌谣祭舞台的大宴会场地“飞天”的专用通道，与住宿客人的活动路线相互分隔，专为通往宴会场地而设。“录制节目时按照流程，总是从这个大厅进入现场，走向录制场地。再次来到这里，才注意到了天花板上具有强烈冲击力的设计呢。存在感很强。”据说，这是将称为云母的建筑材料用树脂固定住而成形的，兼具音响效果。从天花板空隙处探出的钢筋结构采用俯瞰的手法，人们从大宴会场地“飞天”也能看到它，支撑着4盏巨大枝形吊灯的撑架（支柱）更为显眼的祖母绿增添色彩。它与如同张开的阿古屋贝一般的华丽天花板之间形成对比，充满趣味。

メインバーに漂う濃厚な空気。
英式酒吧中洋溢的浓艳气氛。

村野が設計を任された経緯は、1971年に手がけた＜箱根樹木園休息所＞に遡る。78年には＜ザ・プリンス　箱根芦ノ湖（旧・箱根プリンスホテル）＞を設計。2つのプロジェクトを成功させ信頼を得た村野は、今までにないホテル業態を打ち出そうと力を入れる高輪の新ポロジェクトを託されたのだった。ホテル側からの少ないオーダーのひとつが”日本一の宴会場”をつくること。5000人を収容できる唯一無二の巨大空間は、その情熱に村野が応えることで誕生した。命名は作家の井上靖。井上に依頼すると、「日本の春」というテーマの一文が届き、そこから”飛天”という言葉が選ばれたという。
委托村野进行设计的事情经过要追溯到1971年他亲自设计的箱根树木园休息所。村野于1978年设计了箱根芦之湖王子酒店（旧称箱根王子酒店）。村野成功完成了这2个项目，取得了对方信任，因此收到了高轮新项目委托，倾力打造一个迄今为止从未有过的酒店模式。酒店方面提出的为数不多的要求之一，是建造“日本第一的宴会场地”。村野回应了这份热情，一个独一无二、能够容纳5000人的巨大空间由此诞生。大饭店由作家井上靖命名。据说，委托给井上之后收到了主题为“日本之春”的一篇短文，从中选取了“飞天”一词。

続いて櫻井さんが向かったのは本館1階にある＜メインバー　あさま＞。ダークブラウンの壁とグリーンの絨毯の落ち着いた空間で、天井高はなんと5m。窓はないが開放的に感じる空間だ。村野がデザインしたというソファーに腰掛けた櫻井さん。深く沈み込み、身体を包まれるような座り心地に「これ、お酒を飲んだら寝ちゃうやつだ（笑）」とニヤリ。対照的にカウンターは高めのスツールで心地よい緊張感がある。バーテンダーにオリジナルカクテル「紅あさま」を作ってもらった。「色は女性的ですが、口当たりはスッキリしてますね」と櫻井さん。ジンベースにカシスとベルモットを加えてシェイクしたもので、バーの入口に飾られている画家・小山敬三の大壁画《紅浅間》から生まれた、開業当初からあるカクテルだ。見上げればここの天井も迫力がある。ガラス細工による円形の照明がはめ込まれ、大輪の花が咲いたかのように見える。
接着，樱井走向位于主楼1层的英式酒吧——浅间。棕褐色的墙壁和绿色的地毯所营造的空间内，天花板竟然高达5m。虽然没有窗户，但却是充满开放感的空间。樱井坐到据说是村野设计的沙发上。沙发深陷，仿佛包围着身体。樱井笑着说道：“要是喝了点酒，肯定无意间就在这沙发上睡着了。”与此相反，位置较高的吧台凳子有着令人愉悦的紧张感。调酒师为樱井制作了一杯原创鸡尾酒“红浅间”。樱井说：“颜色充满女人味，口感却很爽快。”在基酒杜松子酒中加入黑加仑和苦艾酒之后进行摇荡，这款鸡尾酒来自酒吧入口处装饰的画家小山敬三的大壁画《红浅间》，自开业之初就在提供。抬头仰望，这里的天花板也极具冲击力。玻璃手工艺品般的圆形照明镶嵌其间，如同见到大朵鲜花盛开。

遺作となった数寄屋建築へ。
前往作为遗作的茶室。

晩年の巨匠が全身全霊をかけて取り組んだ巨大空間を味わった櫻井さん。最後に訪れたのは、敷地内の日本庭園にある＜茶寮　恵庵＞。ホテルが竣工した3年後に着工した作品で、村野は茶寮の完成を待たず他界している。
樱井欣赏着大师晚年倾注全部精力建造出的大型建筑。最后来到的地方，是位于建筑内部日本庭园的“惠庵茶室”。这件作品在大饭店竣工3年之后动工，村野未能等到茶室完成就已过世。

「洞床や照明を隠した光天井、＜なだ万本店　山茶花荘＞を見ていたから村野さんらしさが少しわかる気がします」と櫻井さん。＜茶寮　恵庵＞には船底光天井が特徴の「曙」、茶室・如庵を模した「花」など6つの茶室がある。その最奥に位置するのが、表千家の茶室、残月亭を写した「月」だ。村野は残月亭を好み、自宅にもその写しをつくったほどだが、遺作となったここでは、自由な解釈で斬新な空間に仕上げている。見どころは個性的なデザインの洞床や、角柱の代わりとした丸柱など。天井から下がり壁を下ろし、床の間と床前の2畳を、その手前の8畳ときっぱり分けているのもユニークだ。天井は杮葺きになっている。
樱井说："光天井遮挡着洞床[*]和照明，参观过Nadaman料亭总店山茶花庄之后，感觉对村野先生的设计多少理解了一些。"惠庵茶室中有以船底光天井为特点的“曙”和模仿如庵茶室的“花”等6间茶室。位于最内侧的是表千家[**]的临摹了残月亭茶室的“月”。虽然村野非常喜欢残月亭，甚至在自己的住宅中也进行了仿造，但是在作为村野遗作的此处，却创造了一个可以进行自由诠释的全新空间。看点是充满个性的设计有洞床和取代四棱柱的圆柱等等。从天花板上垂下的墙壁将床壁与床前的2块榻榻米和面前的8块榻榻米截然分隔，独具特色。天花板起到了木制屋顶遮板的作用。
注：
*洞床：床是日本茶道的一种装饰结构。在茶室的墙壁上内嵌而成一片铺有榻榻米草席的区域，通常放置挂轴字画或鲜花。客人落座之后，先移到床前欣赏字画。洞床是床的一种下属形式。
**表千家：日本茶道流派之一。宗家位于京都市上京区小川通寺之内通上，代表茶室是不审庵。

「建築は与えられた条件が99%を占める。残り1%が建築家に残された部分だ」。これは村野がよく口にしたという言葉だ。1%とはわずかに思えるが、99%を支配するほど強烈だということなのだろう。村野の1%の創作が開花したこの作品は、開業から30年余りたった今も唯一無二の空気を放っている。
“给予的特定条件占据了建筑的99%。余下的1%是留给建筑师的部分。”这是村野时常挂在嘴边的话。1%自然令人觉得微不足道，但它的作用却强烈到足以左右那99%。这件作品作为村野所创造的1%的成果，自开业起历经30年，至今依然营造着着独一无二的气氛。


（参观感想）
唯一無二の空間を再確認しました。
グランドプリンスホテル新高輪といえば、年に一度、FNS歌謡祭で訪れる場所。その日の印象が強かったので、こうして誰もいない空間を見学するのは新鮮でした。大宴会場の「飛天」を見て改めて思ったのは、ここは唯一無二の空間なんだということ。今となってはつくることのできない豪華さですよね。初めて訪れた＜恵庵＞にも村野さんらしい和の美しさを感じました。先日見学した＜なだ万本店　山茶花荘＞と通ずる空気がありつつも、手法や見せ方は異なっている。前回を踏まえつつ、楽しむことができてよかったです。それにしてもこのホテルが1982年竣工で同い年とは初めて知りました。それを知ると、やっぱりぐっと親近感が湧いちゃいますよね（笑）。
再次确认了这里是独一无二的空间。
说起新高轮王子大饭店，就是借FNS歌谣祭一年一度造访的地方。因为那天的印象非常强烈，所以像这样参观没有客人的建筑感觉很新鲜。看着大宴会场地“飞天”，重新感到这里果然是独一无二的空间。真是现在不可能打造出来的豪华感吧。初次拜访惠庵时也感受到了极具村野风格的和式美。虽然气氛类似上次参观的Nadaman料亭总店山茶花庄，但是技巧和展现方式却不同。在上次的基础上，这次也能非常享受。而且我第一次得知这座大饭店于1982年竣工，正好是我出生的年份。知道了这一点之后，亲近感果然就突然涌现出来了（笑）。


（荐书）
櫻井さんの今月の課題図書　『ある日の村野藤吾』
村野藤吾が親しい人々へ綴った手紙や日記から、巨匠建築家の内的世界に触れる一冊。村野の孫である写真家・村野敦子が執筆。筆者が村野の作品を撮った写真も収録する。村野の筆跡も興味深い（六耀社/2,800円）。
樱井本月的课题图书 《某日的村野藤吾》
本册书包含村野藤吾写给关系亲近的人的书信和日记，可以接触到建筑大师的内心世界。由村野的孙女、摄影师村野敦子执笔。作者拍摄的村野作品也收录在册。村野的笔迹充满趣味（六耀社，2800日元）。


（简介）
さくらいしょう　1982年東京生まれ。人気グループ「嵐」のメンバー。映画、ドラマに出演するほか、報道番組『NEWS ZERO』のキャスターも務めるなど幅広く活躍。情報バラエティー番組『櫻井・有吉　THE夜会』（TBS）が毎週木曜21時56分から好評放映中。6月下旬には恒例の『嵐のワクワク学校2016』が控える。
樱井翔 1982年生于东京。人气组合“岚”的成员。在出演电影和电视之外，还担任新闻节目 “ NEWS ZERO ” 的主播，广泛活跃于多种场合。信息类综艺节目“樱井有吉夜会”（TBS）每周四晚21点56分起播出。6月下旬即将进行惯例活动“岚的欢乐学校2016”。